2030年ってどんな未来?

 HASとは「Happy & Healthy Aging Scene」の略語です。2030年の幸せで健康な高齢化社会を想定し、必要とされるソリューション(モノづくり、コトづくり)をHAS会員企業が自らの得意技を活かして新たなビジネスを多数輩出することを目的としています。

2030年の想定シナリオ

【高齢者の世帯】

65才以上の高齢者のみの単独・夫婦のみの世帯が多く、特に一人暮らし高齢者が約730万人(男性243万人・女性485万人)で、高齢者の20%が一人暮らしをしている。かつては一人暮らしによる「孤独死」が問題になった時期もあったが、現在は一人暮らしに不安のある高齢者の多くがサービス付高齢者住宅や有料老人ホーム等に集まって暮らしている(集住)。一人では生活のできない要介護者は特別養護老人ホーム等の施設に入所し、安心した暮らしができている。

【高齢者の住まい】

高齢者の住まいについては2極化している。一つは高齢者住宅支援制度を活用して自宅をアダプテーションパネル*1を利用したリフォームを行い最後まで自分らしく暮らし続けるという住まい方。また一方では住みづらくなった自宅を売却、あるいはリバースモゲージの制度*2を利用して資金を調達し同じ地域のサービス付高齢者住宅や有料老人ホームに移り住む。また、自宅の無い人は自治体の保証人引き受け制度により、同じく地域の空き家を利用した廉価なサービス付高齢者向けシェアハウスに移り住むという住まい方。いずれにしても多くの高齢者は質の高い住環境のなかで安心して暮らしている。

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【街なか環境・移動手段】

放っておけば30%程度が空き家となり、ゴーストタウンと化したかもしれない街なかも、自治体・地域住民・企業(NPO)・学校のコラボにより高齢者が主体となるエリアマネジメント*3が推進され、空き家を利用したコミュニティーセンター、(多世代)集住のための居住施設、公園、市民農園等に整備され、緑豊かで歩きたくなるような住環境となっている。
移動手段も一家に数台の自家用車の保有は無駄になり、元気な高齢者の家庭では一家に一台チョイ乗り用のPV(Personal Mobility)が主体となっている。郊外へ行く場合には街なかのコミュニティ・スポットで公共交通に乗り換えるかカーシェアリングを利用する。

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【高齢者の就労】

昔から比べて医療やアンチエイジングの製品やサービスが進歩した現在、65歳以上の高齢者の8割は若干の体力の衰えを感じながらも自立して生活できる人たちなので、多くの高齢者は地域に貢献しながら身近なところで働き続けられる「生きがい就労」に従事し高齢者の知財(知識や経験)が地域での教育や経済等地域の活性化に活かされている。また、就労環境も高齢者や障害者に優しいユニバーサルな環境が整備されている。

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【高齢者の生活】

生活面では、エリアマネジメントの推進により隣近所のコミュニケーションが多くなり、趣味や娯楽をみんなで楽しめるようになった。コミュニティーセンターが集まる場所の中心になっているが、各家でも改築時に縁側をもうけて隣近所の人たちが気軽に寄れるようなしつらえをしたり、空き部屋に大きな食卓を入れて食事会を開いたりと隣近所の人たちの行き来も活発になっている。良い関係のコミュニケーションが互助の精神を育みお互いに助け合いながら充実した生活を送っている。身体が不自由になり生活支援や介護が必要になった場合でも、元気な人たちによるボランティア活動が活発に行われている。
また、ICTの発達によりデバイスの操作を意識せずユビキタスな環境で生活機器の操作や情報の収受ができるようになった。特にICTを活用した「トータル・ライフ・サポートサービス」が事業化され健康・医療・介護を含めた生活全般の情報が一元管理されるようになった。食事における栄養管理の「グルメ・サービス」、健康管理の「ヘルスログ」「ヘルスモニタリング」、総合医療介護支援サービスの「安心おまかせサポート」等各種サービスが国家資格の有資格者である「高齢者生活支援コーディネーター」が中心となり、ケアマネージャー・医師・看護師との連携を密にすることにより確実に提供されるようになった。
また、「トータル・ライフ・サポートサービス」には「ICスマートカード」のサービスも付与されており、日々の買い物やカーシェアリング、公共交通機関の利用、各種保険の支払いまで現金なしで決済ができる(地域通貨のICカード版)。

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【医療・介護】

このように生活支援サービスが充実し、住み慣れた地域で安心・安全な生活ができるようになりピンピンコロリと最期を迎えたいが、やはり医療や介護が必要となる。脳卒中や心筋梗塞、転倒等で倒れ病院へ運ばれて入院し、その後介護が必要になる場合が多い。
病院の入院患者は、高齢者人口の増加によりリハビリ(在宅復帰支援)ニーズが増大し、在宅支援の回復期の入院患者が多くなっている。
病院を退院した人は2025年から開始された「地域包括ケアシステム」により在宅でかかりつけ医による訪問看護を受け、在宅系介護サービスを受けている。この場合にも「トータル・ライフサポート」を活用している。
なお、この「トータル・ライフサポート」事業のサービスパッケージの海外輸出が始まっている。

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アダプテーションパネル
*1:戸建て住宅の一部の部屋をモジュール化したパネルでリフォームする。モジュール化したパネルは耐震補強の機能も併せ持つ。例として元気な時はAVパネル⇒介護が必要になったら在宅介護・医療パネルと変更可能。水回りパネルは元気な時はホームバーパネル⇒介護が必要になったら洗面・トイレパネルと変更可能。このようにさまざまな機能を持ったパネルを生活者のニーズによってフレキシブルに取り替えられるようにモジュール化したパネルリバースモゲージ制度
*2:自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を毎月の家賃に充てる。金融機関は抵当権を行使して担保物件を競売にかけて返済に充当する制度エリアマネジメント
*3:地域における良好な環境や、地域の価値を維持向上させるための住民、事業主、地権者などによる主体的な取組

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